科学するエッセー
 

わからないから楽しい ~学ぶことがもっと楽しくなる+( プラス)の考え方~

わからないから楽しい~ 学ぶことがもっと楽しくなる+( プラス)の考え方 ~
 私が発明し、特許となったものに「分子生物学的BIOFUEL生成装置及びBIOFUELの生成方法」というものがあります。名前から受けるイメージは、何か面倒くさそうな感じがしますね。 
 実は私の特許の着眼はとても単純なんです。それは昆虫観察からの応用です。  
 あなたはカメムシを知っていますね。手で触ったりすると、あのとても臭いにおいを出す五角形の底を引き伸ばしたような形をした虫です。呼び名も「クサムシ」や「屁こき虫」「ヘッピリ」という俗称があり、英名の“stink bug”(臭い虫)といったあまりうれしくない名前の虫です。
 私が着眼したのは、カメムシが出す酵素とそれが植物に及ぼす化学作用でグルコース(ブドウ糖)を生産するといった機能で、これを特許に応用したのです。
 この発明の着想を得たきっかけは、私が国と福島県のある市町村からの依頼で農山村を視察した時に出会った事にありました。
 それは、ある農家の庭先の植物を何気なく眺めていたら黒く、動く、かたまりに目が留まりました。その植物にたくさんのカメムシが群がっていたのです。しばらくの間、観察していると、その植物がしまいにはしおれてしまったのです。そのことに私は驚き、後で調べたらとても面白い事が分かりました。
 カメムシ(特にヘリカメムシ科)は茎から栄養摂取するらしく、それが非常に特徴的な摂食法をとることがわかりました。その摂食法は「茎に突き刺した口針からスクラーゼという酵素を含んだ唾液を注入し、細胞間に存在するスクロース(ショ糖)分子をグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)に加水分解してしまうらしいのです。そうすると、細胞外の液の浸透圧が分子数の増加によって非常に高くなり、細胞内から細胞外にアミノ酸やビタミンなどの栄養素が抽出されるようになります。カメムシはこれを吸収するらしいのです。そのため、茎から栄養摂取するヘリカメムシ類が激しく吸汁した植物は、しばしば組織が砂糖漬けになったように脱水され、しおれてしまう」という事だったのです。 
 私が発明した特許はこの原理をそっくり応用し、真空採血管の原理(他社特許)を用いた採取器(カメムシに見立てました)のなかに予めスクラーゼをセットしておき、樹液を採取後、採取器管内で加水分解させ、BIOFUELグルコース(ブドウ糖)を得るものです。
 どうです、とても簡単でしょう。あなたの周りで発見した、わからないことを学んでみるだけで良いのです。そして何度もわからないことを探し、見つけ、学ぶうちに、発明家としての基礎があなたのなかにできあがっているかもしれません。
 私の経験からは、発明には大きくは2つのセンスが必要だと思っています。この「わからないことを学んでみる」ことはそのうちの大切なセンスの1つです。  

それではもう1つ発明に重要な「問題を解く」センスの身に付け方を話します。
実は発明をする過程を考えてみると、数学の問題の答えを見つけようとするときとどこか似ているのです。このためあなたには「問題を解く」ときの4つのステップを紹介しましょう。これは数学者George Pólya が著書How to Solve It (1945) で話している有名な内容です。
 
第1のステップ「問題を理解しなければならないUnderstand the Problem(Identify the goal)」 理解しない問題に答えることは、ばからしいことです。だから「わからないこと、わかっていること、与えられている条件など」のような、問題の重要な部分をつかんでいなければなりません。 
第2のステップ「理解できたら、計画を立てようDevise a Plan」いろいろな項目がお互いにどんなに関連している、また、わからないことがわかっていることとどのように関連を持っているかを知ることが、答えがどのようなものであるかを知り、計画を立てるために必要です。未知のものを求めるためには、どんな計算や作図が必要かということについて少なくも輪郭だけでも知っていれば、それで計画ができたことになります。
第3のステップ「計画を実行しようCarry out the Plan」 一つ一つが正しいかどうかを問題になっている点に注意して、それらが正しいことを理解でき、そのことを証明できるまで納得できることが大切です。
 このように「問題を解く」ために、日頃から「考える習慣」を身に付けていると、見慣れない問題でもそのうち答えが姿をあらわしてくるのです。 あなたも試してみませんか?ある日突然、社会を大きく変える発明があなたから生まれるかもしれません。そう考えると、わからないことを学ぶって楽しくありませんか!ある発明が「わからないことを学ぶ楽しさ」から生まれたとしたら。
学問へのきっかけ 小中学生のころは数や図形で遊んでいました。台形の面積の公式で等差数列の和を求めることができることを発見して喜んだりしていました。今でも車のナンバーを見るとつい4ケタの数でどうやって10を作ろうかと考えてしまいます。特に数学者になろうと意識した訳ではなく、自分の興味の赴くままに歩んできたように思います。