(2015年1月1日掲載)
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公益財団法人寿泉堂綜合病院
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地域と共に
貴院は長い歴史の中で、地域に頼られ、地域と共に歩んで来られたそうですね
新病院は24階建ての居住併設型ビル(マンション一体型)の地下1階から11階部分を占め、全国から注目されています。県中医療圏のうち当院がある郡山医療圏には公的医療機関がほとんど無く、 財団法人が運営する病院が半径1.5㎞圏内に複数立地しているという特色があります。こうした特色のある地域の中では、各病院が良い意味で競い合い、そして助け合いながら、各々の特長を生かした医療を展開しています。また、当院は2012年9月に福島県知事より地域医療支援病院の承認を受け、現在は歯科を含む300以上の医院・クリニックと病診連携を推進しています。当口腔外科を例に挙げると、年間1,000名(平成24年度 実績1,600名)を超える患者さんを地域の医院からご紹介いただき、地域の中核診療施設としての役割を担っています。患者さんの中には駅前という好条件から一般の虫歯治療や歯列矯正等の治療目的で来院する方がいますが、口腔領域の悪性腫瘍や粘膜疾患、また合併症を持つ患者さんの診療を中心に据える体制について丁寧な説明を心掛け、一般歯科医院との役割分担を明確にしてwin-winの関係を構築しています。
地域の医療を支える診療体制
新病院の開院(2011年)に合わせて先進的な放射線治療装置を導入されたそうですが、どのような治療が可能になったのでしょうか
貴循環器センターでは新たな体制が整いつつあるそうですね
当院の柱として掲げた循環器病センター、腎・糖尿病センター、消化器病センターのうち、循環器病センターは、心血管疾患と脳血管疾患の急性期医療を中心に診療を行っています。 昨年秋、待望の日本脳卒中学会専門医資格を有する先生が着任(脳卒中科)しましたので、今後脳卒中診療の強化を図りたいと思っています。脳卒中は日本人の死因の上位にあるばかりでなく、厚生労働省の調査によれば「要介護」の原因として最も多い疾患です。着任して間もない時期ではありますが、脳神経外科医師等とチーム医療を開始しており、今後の受入れ強化に期待しているところです。震災の影響で2名に減少した循環器内科も一昨年3人体制にもどり、急性心筋梗塞の初期治療である冠動脈インターベンションや心不全の救急診療に精力的に取り組んでいます。
貴寿泉堂で外科手術を学びたいという若手医師の声があると聞きますが
当院の外科は、消化器の手術以外に乳腺、甲状腺、など幅広い領域の手術を行っています。福島県立医科大学で修業を重ねたふたりの部長のもとで2名の若手医師が研鑽しています。手術の中で難易度が高いとされている膵頭部十二指腸切除手術についてDPC対象症例のベンチマークと比較すると、手術時間が短く、合併症が少ない様子がうかがえます。十二指腸や胆管が複雑に密着・交差している部位にできたすい臓がんの手術では、これらの臓器を一度離断した後に吻合再建しなければならず、長い時間を必要とするため、多くの施設では午前中から午後までの時間を費やしています。当院では、多くの症例で午後から手術を開始して、しかもアフター5をきちんと確保することができています。ほかの手術もまた然りで、若い先生たちの共感が得られ、派遣先としての人気につながっているのです。上部・下部消化管の内視鏡治療や肝胆膵領域の治療を行っている内科医師と連携して患者さんの病状に応じた適切な治療を選択し、消化器病センターの診療レベルを高めています。県中地域における産婦人科の患者シェア率が高いそうですので診療のご様子をうかがえますか
産婦人科の歴史は長く、寿泉堂で産声を上げたという職員が多く在籍しています。産婦人科は、現在、日本産婦人科学会専門医4名と専攻医(産休中)1名の5人体制で診療しています。福島県が整備・推進する周産期医療ネットワークシステムの協力施設に認定されており、平成25年度の分娩総数は800件を超えました。新生児の集中治療に長けた小児科医によるサポート体制も充実しており、先日も、治療を受けた新生児のご両親から感謝の投書をいただいたところです。また、婦人科領域では、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫などの良性疾患に対する内視鏡手術を積極的に取入れ、平成24年7月からは単孔式腹腔鏡下手術も導入しています。平成25年度の産婦人科病棟の稼働率は100%超で他階のベッドを利用するなど、非常に多忙ですが、率先してクリニカルパスを導入して、医療の標準化により安全性の確保、効率アップに力を注いでくれています。今後はさらに泌尿器科とコラボしての女性生殖器疾患(膣脱、膀胱脱、肛門脱)治療に向けて準備中です。
若手医師への期待
初期臨床研修プログラムの特色はございますか
先生は研修医の皆さんにどのような医師になって欲しいと思われますか
研修開始時のオリエンテーションのときにお話する内容が3つあります。最初に、病院のなかで「笑顔と挨拶」がとても重要であるということを強調します。これは投書箱のご意見から得た教訓で、医師であると同時に社会人として求められることだと話しています。二番目には、「足で稼ぐ」ということです。研修中には、診療に関して良くわからないことや疑問に思うことが沢山出てくると思います。そのようなときには労をいとわず、直接、指導医や専門医の所に足を運んで指導を受けることを勧めています。そうすることでプラスアルファの話を聞くことができ、その積み重ねによって知識が膨らんで財産になると思うからです。そして最後に、他の職員と対等の立場で話のできる雰囲気を作り、協力しながらチーム医療に徹しなさいと言います。他の医療スタッフから自分が気づいていないことを教わったり、ときには大きなミスを未然に防いでくれることもあるのです。何よりも、独りよがりは良くありません。これまでお話しした3つの内容を踏まえて、私が大学医局から最初に赴任した病院の名誉院長から教えていただいた「病人を愛し、病院を愛し、勤労を愛し、向上を愛す」ということばを披露したうえで、「同僚を愛す」を加えて説明します。 職員同士が協力できる環境を築くことによって、より良い医療を提供することができるからです。
今年度から福島県立医科大学の1、3年生を対象に、地域医療について理解を深めてもらうための病院一週間見学が開始されました。見学に来ていただいた各学年10名の学生に、病院は患者さんに医療と癒しを提供する一方で、患者さんと向き合ったり、職員と協力することをとおして、各個人の“人間性”を育て高める場所です、と言いました。患者さんや病院スタッフと触れ合うことによって、自分自身を成長させて欲しいと思っています。
先生は、なぜ循環器科の道を選択されたのでしょうか
私が卒業した昭和49年当時、東北大学はすでに臨床研修を地域で行うことがルーチンになっていたこともあって、静岡の済生会病院を研修先に選び、主に外科と内科をローテート研修しました。循環器科でご指導的いただいた部長先生が東北大学の先輩で、その人柄、医療に対する姿勢に共感をおぼえ、循環器科に進むことになりました。3年間研修した後、出身大学に戻り6年間の循環器領域の研究生活に引続いて、仙台市内二つの病院に勤務しました。はじめに着任した病院は消化器科、整形外科を中心とする500床を超える病院だったので、循環器領域だけでなく14年間にいろいろな病気を経験することができました。 その後の人事異動で、狭心症や心筋梗塞にたいするインターベンション治療をリードする病院で治療カテーテルの経験も積みました。仙台市、仙台市医師会がサポートする365日24時間救急の忙しい病院でしたので、当直や土日のオンコール当番をこなしながらの12年でした。60歳間際になって現在の病院で働くことになり、現在は入院患者を受け持つことはありませんが、これまでの経験をもとに一般内科を担当し、専門医に振り分ける役を担っています。医師免許を取得して40年を振り返るとき、よき先輩、よき同僚に恵まれてきたことを感謝しなければならないと思っています。2015年はどのようなことを目標にされているのでしょうか
寿泉堂綜合病院としては医師を含む医療スタッフの確保、そして医療機能の充実が最重要課題です。「患者さん第一」の理念を実現し続けるためには、精神論だけでは限界があります。医療の対象となる高齢者が増加している反面、逆に病院勤務者が減少しているという現実に直面します。医師の招聘はもちろんのこと、看護師、理学療法士など多くの職種で人材の確保に力を入れ、医療の質を高めるインフラ整備を続けたいと思います。福島県の主導で、医療圏ごとに医療機関をネットワーク化して診療情報を共有しようとする事業が進んでいます。これに遅れることなく、これまでオーダリングにとどまっていた当院としても、今秋の電子カルテ稼働にむけて作業を開始しました。この事業をうまくソフトランディングさせることが大きな事業となります。
今述べたような人材の確保・電子カルテの導入には経営基盤の安定が必須です。当法人の理事長が “No margin, no mission”ということをよく口にしますが、まさにそのとおりで、今年に限ったことではないと認識しています。厳しい医療環境のなかではありますが、「税と社会保障の一体改革」により二年ごとに改定される診療報酬の内容を吟味し、一定の利益を確保して病院機能を充実・発展させることによって、地域の皆さんに信頼され、愛される病院であり続けたいと思っています。現在の重点課題は、国が推進する病床再編にどう対応するかです。今年は、これまで病床管理室・委員会において協議・検討してきた方針を院内の診療部門、病棟部門にいかにして浸透させ、理解していただくか、そして5年後の病棟再編に向けて歩みを早める一年と位置づけしています。
※頼れるふくしまの医療人では、語り手の人柄を感じてもらうために、話し言葉を使った談話体にしております。
プロフィール
金澤 正晴 氏(かなざわ まさはる)
役 職 (2015年1月1日現在)
第九代寿泉堂綜合病院長
(並びに公益財団法人湯浅報恩会副理事長)
出 身
東北大学
専門分野
循環器内科
資 格 等
医学博士
日本内科学会認定内科医
日本循環器学会専門医
日本医師会認定産業医
所属学会
日本内科学会
日本循環器学会
日本心臓病学会
日本心血管インターベンション治療学会
日本腎臓リハビリテーション学会
東北救急医学会
経 歴
昭和49年 03月 東北大学医学部卒業
昭和49年 04月 済生会静岡病院内科
昭和52年 04月 東北大学第一内科
昭和58年 07月 東北労災病院循環器科副部長
平成06年 04月 東北労災病院循環器科部長
平成09年 09月 仙台市医療センター仙台オープン病院循環器内科部長
平成10年 04月 仙台市医療センター仙台オープン病院副院長
平成12年 04月 東北大学医学部臨床教授(兼務)
平成21年 10月 寿泉堂綜合病院長
(並びに公益財団法人湯浅報恩会副理事長)
〒963-8585
福島県郡山市駅前1丁目1番17号
TEL:024-932-6363(代)
FAX:024-939-3303
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