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 2014.2.14(FRI)、15(SAT)、公立大学法人福島県立医科大学副理事長で同大学医学部器官制御外科学講座主任教授である竹之下誠一氏が会長を務める、第10回 日本消化管学会総会学術集会が福島市で開催された。
 第10回を迎えた記念すべき当学術集会は、「福島県の現状を実感していただきながら、この10年を振り返り、これからの飛躍を熱く心掛けてほしい」という竹之下誠一会長らの想いが込められたふくしま県の紹介映像に始まり、開会の挨拶へと続いた。
 2日間の学術集会は、記録的な大雪の中での開催となり各地で交通網がまひ状態に陥ったが、「我々医師はこうしたアクシデントには慣れている」 と話す竹之下氏のもとで、参加者や関係者等に支援と協力を求めながら粛々と進められた。また、ふくしま県の紹介映像を通して、「参加された先生方の体感として、真の福島県の姿をそれぞれの故郷で伝えていただければ本望である」と話した。

 第10回 日本消化管学会総会学術集会のメインテーマは「知と技の融合」。
 ポスターやプログラム・抄録集などの表紙に使われたのは、猪苗代町にある猪苗代湖の「しぶき氷」*。竹之下氏は、これについて、「確固たる“知識”を柱として少しずつ、しかし継続することにより形作られる氷の芸術。これは融合を象徴するものであり、異なる分野の多面的な知識と技術が融合し、新たなる発想を生じることを祈念いたします」と、想いを述べた。
 *厳冬期に、猪苗代湖天神浜から南側の林を抜け、長瀬川の河口に向かうと自然が作る氷の芸術「しぶき氷」が見られます。これは湖水が強い西風にあおられて、岸辺の樹木に氷着したもので国内ではきわめて珍しい現象だといわれています。「樹氷」に勝るとも劣らない。美しさで見飽きることがありません。(-福島県観光情報サイト-ふくしまの旅より引用)

注目のプログラム
会場:福島ビューホテル、コラッセふくしま、ホテル福島グリーンパレス
1日目 2014.2.14(FRI)
■ 10周年特別企画
 消化管学10年の歩みと今後の展望
 A. 食道:MM~SM1食道癌の取り扱い
   司会:幕内博康氏
   演者:小山恒男氏、桑野博行氏
 B. 胃:早期胃癌に対する合理的治療
   司会:瀬戸泰之氏
   演者:小野裕之氏、北川雄光氏
 C. 小腸:小腸疾患に対する診断的アプローチ
   司会:緒方晴彦氏
   演者:山本博徳氏
 D. 大腸:早期直腸癌に対する治療アプローチ
   司会:前田耕太郎氏
   演者:矢作直久氏、伊藤雅昭氏
■ コアシンポジウム3
 機能性消化管疾患:実践的治療戦略
  司会:藤本一眞氏、富永和作氏
■ 招待講演
 iPS細胞からの臓器分化誘導
 司会:竹之下誠一氏  演者:中島祥介氏
■ 特別企画1
 消化管のトリビアⅠ
 司会:木下芳一氏
 1.細胞のキラリティが消化管を左右非対称にする
演者:松野健治氏
2.脳腸相関研究の最前線
演者:福土審氏
■ コアシンポジウム2
 炎症性腸疾患:治療戦略の新たな展開を求めて
  司会:渡邉聡明氏、鈴木康夫氏
■ ACG招待講演
  The emerging role of food in the pathogenesis
  and treatment of Functional GIDisorders(FGIDs)
  司会:荒川哲男氏   演者:William D.Chey氏
■ 記念講演
 福島復興:現在までのあゆみ
 福島原発事故と健康リスク管理
 司会:前原喜彦氏   演者:山下俊一氏
2日目 2014.2.15(SAT)
■ 特別企画2
 新規イメージング技術の消化管疾患
 への応用
 司会:藤盛孝博氏、馬場秀夫氏
 1. PET-MRIの特徴と消化管疾患への応用
 演者:織内昇氏
 2. 次世代内視鏡への展望
  ‐新たなイメージング内視鏡の開発‐
 演者:金子和弘氏
 3. がん細胞だけを光らせる化学蛍光プローブの開発
 演者:浦野泰照氏
■ コアシンポジウム1
 消化管悪性腫瘍の診断と治療戦略:
 GISTと消化管NETの概念と治療の新展開
 司会:杉山敏郎氏、上本伸二氏
 基調講演:小松嘉人氏、杉原健一氏
■ 特別シンポジウム
 日本消化管学会のありかた
 ~これまでの10年とこれからの10年~
 司会:坂本長逸氏、日比紀文氏
 基調講演:寺野彰氏
 討論者:高橋信一氏、桑野博行氏
■ コアシンポジウム4
 内視鏡診断・治療の進歩:
 大腸SM癌内視鏡診療の新展開
 司会:田中信治氏、斉藤裕輔氏

■ JGA Keynote Program
 国際セッション(The 7th IGICS)
 Gastrointestinal Function and Diseases

第2回 「消化管“王”決定戦」
~知識と技を併せ持つのは誰だ?~



 <運営委員>
中島政信氏  (獨協医科大学 第一外科上部消化管科)
福井広一氏  (京都医科大学 内科学 上部消化管科)
山口博紀氏  (東京大学 腫瘍外科)
大木進司氏、鈴木聡氏、中村泉氏
          (福島県立医科大学 器官制御外科学講座)

 第9回日本消化管学会から始まり好評を得ていた「消化管“王”決定戦」は、事前にエントリーされた消化管チーム同士が、消化管学の知識と内視鏡の手技、で競い合う戦い。2回目の開催となる今大会も会場は大いに盛り上がった。
 予選は、福島県立医科大学器官制御外科学講座 鈴木聡医師の解説の元で、消化管学の知識が競われ、エントリーした19チーム(大雪のため4チームがキャンセル)が消化管学の難問クイズにチャレンジし、回答率の高かった上位4チームが決勝進出となった。

 続く決勝戦は、下部消化管トレーニングモデル(オリンパス)を使用し、内視鏡の手技が競われた。(本来は上部消化管モデル手技も予定されていたが大雪の影響で中止)
 課題は、下部スコープを挿入し生検鉗子を使用して盲腸にあるビーズを掴み回収することで、これは第一回の大会よりも難易度を上げたと説明された。序盤は初代消化管王チームがリードする場面が見られたが、最終的に予選4位通過の会津医療センター小腸・大腸・肛門科(遠藤俊吾教授、五十畑則之講師、根本大樹病院助手)が逆転優勝し、竹之下誠一会長から優勝カップが授与された。



 閉会式では、竹之下誠一会長が、「最後まで皆さんに参加していただき、涙が出るぐらいうれしい。みなさんの熱い心に我々も感動している」と述べ、今回、会津医療センターチームによる逆転優勝という形で幕を閉じた消化管王決定戦について「今後も正に“知と技の融合”ということで続けて行きたい」と話した。 また、記録的大雪の中で行われた2日間の学術集会については、「医療ということは如何に不条理と戦うかであり、医療人というのは予測のつかないことに慣れている。自分がベストを尽くしても報われないのが医療人の特徴であるから、そういう意味で今後とも皆さんのライフスタイルや生き方に参考となるような福島での学会であったと思っていただきたい」と話し、拍手喝采の中で終了した。



















消化管学会HP: https://jpn-ga.jp/
福島県立医科大学 医学部 器官制御外科学講座HP: http://www.fmu.ac.jp/cms/surgery2/index.html

頼れるふくしまの医療人 竹之下誠一氏記事
http://iryojin.com/doc/22takenoshita.pdf



 福島県で開催された、記念すべき第10回学術集会は、当県のさらなる医療分野の発展に向けて大きなメッセージを残し、福島の復興に勇気を与えた。
 会長を務められた竹之下誠一先生をはじめ、ふくしまには頼れる医療人がたくさんいる。今回、その素晴らしい先生方によって当県の医療が支えられ、さらに全国からの応援や支援があることを力強く感じた。


弊誌では、引き続きさまざまな医療活動をご紹介していきます。

今回消化管“王”に輝いた会津医療センター 小腸・大腸・肛門科HP
http://www.fmu.ac.jp/amc/byouin/shinryouka/shouchou.html

同診療科教授 冨樫一智氏記事
http://www.iryojin.com/iryojin/backnumber/130301_2iryojin.html